ソールのメンテナンスはめっちゃ大事
博識の方が卒業論文でソールのメンテナンスについて論じていた。
めっちゃ面白い。
・はじめに
1900年代初頭、アラスカでスノーボードは生まれた。しかし初めはスポーツギアでなく、狩猟時深雪の山を降りる道具であった。
日本に初めてスノーボードがやって来たのは1982年。当時のスノーボードはバインディングやブーツも無く、ベニヤ板二本をつなぎ合わせ、ノーズ部分に紐をくくりつけたという簡単なものであった。今のような様式になるまでに5年の歳月を必要としたのだ。
多くの技術者やスノーボードバカの努力によって、30年前のギアからは想像できないほど現在のギアは進歩した。コンピューターチップ内臓で滑走時の微妙なズレを自動的に補正したり、マイナスイオンを発生させ雪質を整える板など、各ブランドのハイテクギアは様々で、技術の粋を注ぎ込み、他社ブランドとの差別化を計ろうと必死だ。
しかし、板の性能は常に保たれるのではない。しっかりとしたメンテナンスを施すことによって、はじめて板の性能は保たれるのである。多くのライダーたちが、メンテナンスに対する正しい知識を持っていなかったり、面倒だ、という理由から、このメンテナンスをしていないことが多いのだ。
第一章 メンテナンスの必要性
Ⅰ.雪と滑走面の抵抗
雪と滑走面の間には①水の吸い付きによる抵抗、②乾燥摩擦抵抗、③静電気による抵抗、④汚れによる抵抗の四つの抵抗があり、ワックスにはこれらの抵抗を軽減させ滑りを良くする効果があるのだ。今、市場には様々なワックスが流通し、それらの効果を知ることが抵抗除去には重要なのである。
①水の吸い付きによる抵抗
スノーボードが滑り出す原理は滑走面が雪の上を滑ることによる摩擦熱で雪の表面がわずかに溶け出し、硬い水の膜が潤滑の役目を果たすことによって摩擦を減らしているからである。しかし、必要以上の水が溶け出したとき水が吸い付き、抵抗となってしまう。しかしワックスには撥水性があるためこの水の吸い付きによる抵抗を軽減しているのだ。
滑走面にはストラクチャーと呼ばれる細かな溝があり、これが水の排出を助け抵抗を減らしているのだ。また、普通のワックスの撥水性は時間とともに弱くなっていくが、これはワックス分子の水にくっつきやすい部分が雪面のほうに並び変わるためで、ワックスが切れたわけではない。切れたと思いワックスを上塗りしてしまうとさらなる抵抗を生み出してしまうのだ。このような場合は、フッ素ワックスやシリコン添加剤などが撥水性が高く、暖かいゲレンデコンディションや湿った雪といった水による抵抗が多い条件などにはさらに威力を発揮するのである。
②乾燥摩擦抵抗
寒くなると雪は溶けにくく乾燥した雪になる。このとき雪と滑走面は密接しているのではなく、雪の粒子と滑走面のわずかな接触部において雪は溶け出し、潤滑のための水分が存在している。しかし、雪温の低下に伴いその割合は減少し、滑走面と溶けていない雪の粒子が直接接触してしまう機会が増えていく。このときの抵抗が乾燥摩擦抵抗である。
理論上、これらを軽減するためには雪と滑走面の間にそれらよりも軟らかいワックスがあれば良い。滑走面が移動する場合、ワックスが雪との接触を防ぎつつ弱い力で切れるため、抵抗も無く移動することができる。しかし、ワックスの無い場合、滑走面と雪のどちらか弱いほうがむしりとられるか、乗り越えなければ移動できない。そして抵抗も増え、雪が硬い場合は滑走面の劣化につながってしまうのだ。
この場合、ワックスが柔らかすぎると雪の粒子が刺さり抵抗となってしまう。雪の粒子は硬いほど、また尖っているほど刺さりやすいので、それに応じた硬めのワックスを用いたほうが抵抗の軽減になるのだ。雪の粒子は温度が低いほど硬くなり、降ったばかりの新雪ははっきりしているため刺さってしまう。このため低温、新雪用のワックスは硬いのである。
逆に、古い雪は溶けやすく、隣の雪とくっつき粒子が丸くなるので、軟らかいワックスのほうが有効なのである。
しかし、ワックスがどんなに頑張ったとしても、水よりは硬いので適度な水量で潤滑されているときが最も抵抗が少ないのだ。
・圧力とベースバーンの関係
一般的にワックスは軟らかいほど抵抗が少なく、撥水性も高くなる。しかし、圧力が大きい場合、軟らかいワックスでは支えきれず滑走面と雪の粒子が接触してしまい抵抗が大きくなるのだ。
この場合、硬いワックスを用いたほうが抵抗も少なく滑走面の荒れも防げる。スノーボードの場合、雪質に合ったワックスを使ったのにも関わらずエッジ付近が白くなり荒れている状態になることがある。このことをベースバーンと呼ぶのだが、この場合、エッジ付近に硬いワックスを用いることで防ぐことが可能だ。より強力なエッジングをするライダーはより硬いワックスを使用する必要性があるのだ。
③静電気による抵抗
滑走面に用いられている素材のほとんどがポリエチレンである。このポリエチレンは静電気を帯びやすく、また滑走中、雪との摩擦によって徐々に静電気が蓄積されていく。静電気を帯びたもの同士は互いに引き寄せる性質があり、滑走悪化につながってしまうのだ。その割合は、乾いた雪の場合、全抵抗の約40%、湿った雪の場合でも10%程度ある。
この対処法は電気をよく通すグラファイトワックスかフルオログラファイト、もしくは導電性のあるガリウムを含んだワックスが効果的である。また、グラファイトをポリエチレンのなかに練りこんだグラファイトソールというものもある。しかし、このソールに電気をあまり通さないワックスを塗ってしまっては何の意味も成さないので、導電性のあるワックスを塗るべきだ。
ここで静電気除去に効果的なワックスについて詳しく解説してみることにする。
・グラファイトワックス
フッ素が現在のように一般化する前に登場した黒いワックス。一般的なワックスのように撥水性は無いが静電気による抵抗要素の除去、ゴミや汚れの付着防止効果、そしてグラファイト粒子の滑る性質を利用し、グラファイトソールとの組み合わせで広く使われていた。しかし、現在ではフッ素ワックスの一般化、ワックス自体が黒いためギアが汚れてしまうという理由からグラファイトユーザーは減ってしまったのだ。
グラファイトワックスを使用する場合、グラファイト粒子を均一に分散させるためにワックスを暖め生塗りし、それを広げるように塗る。またこれらのワックスに撥水性を加えたいのであれば、グラファイトワックスを塗った上に、雪質に応じたフッ素ワックスをかけたり、フッ素入りのグラファイトワックスを使用することが良いだろう。
・フルオログラファイトワックス
フッ素とグラファイトを科学的に統合したワックスで、フッ素の撥水性とグラファイトワックスの静電気を除去する性質を併せ持ち、幅広い雪質に対応可能。
これも暖めて薄く生塗りしアイロンで広げて使用する。単独でも用いられるが、さらにフッ素を上塗りし使用されることもある。
・ガリウムワックス
ガリウムも金属なのでグラファイト同様静電気除去、そして撥水性、ポリエチレンとの相性が良いという性質がある。
④汚れによる抵抗
春先などの汚れた雪質で、滑走面が黒くなり滑らなくなっている場合、雪に含まれているゴミや汚れといったものが滑走面のワックスに刺さっているのだ。板が滑らないといってさらにワックスを上塗りしても、かえってそのワックスにゴミや汚れが刺さってしまい逆効果である。
このような場合、フッ素系のワックスを仕上げに塗ることが効果的だ。フッ素にはゴミや汚れを寄せ付けない性質があるため、雪に含まれるゴミや汚れが刺さるのを防いでくれる。その他にグラファイトには静電気を逃がす性質があるため、汚れを吸い付けることを防止してくれる。最近ではフッ素とグラファイトを科学的に統合したフルオログラファイト(fluorographait)ワックスというものも開発され、より効果的にゴミや汚れを除去してくれるのだ。
また当然のことながら、保管時にも滑走面は静電気を帯びるため、板にカバーをかけたりケースに入れることで静電気の発生を防ぐことができる。このこともゴミや汚れの吸い付きを軽減させるのには効果的なのだ。
第二章 メンテナンスの重要性
Ⅰ.ワックスが染み込む原理
ほとんどの板の滑走面素材はポリエチレンであるが、これは、炭素原子1個に水素原子が2個結びついたものが長い紐状になったものがポリエチレン分子となる。より細かな説明をすると、エチレンというガスは炭素原子2個に水素原子4個ついており、これを数多くつなげるとポリエチレンができるのだ。ちなみに滑走面用ポリエチレンとしては、炭素原子は35,000個以上のものが多い。
この他にポリプロピレンやABS樹脂なども滑走面素材として用いられるが、いずれも安い板に使われワックスは染み込まない。
ポリエチレンの分子は紐状でそれがいくつも集まることでポリエチレンの塊となる。紐は溶けた状態では互いに絡みあっているが、冷えて固まると部分的に整然と並び、この部分を結晶(crystalline)と呼ぶ。またその他の部分を非結晶といい、アモルファス(amorphous)と呼んでいる。結晶部分は密に並んでいるが、アモルファス部分には隙間があり、ワックス分子はこの隙間に入り込むのである。
分子の長さが短く、炭素原子が20~50個であるところは違うが、通常のワックスはポリエチレンと同じ構造しているのだ。このようなワックスをパラフィンワックスと呼び、炭素(カーボン)と水素(ハイドロジェン)から成るものをハイドロカーボンワックスと呼ぶ。しかし、これはグラファイトワックスではなく、ただのパラフィンワックスである。
炭素原子の数が多い場合、分子が動きにくく硬いワックスとなる。ただ、ポリエチレンの分子に比べるとワックスの分子ははるかに小さいので、隙間に入りやすく、同じ構造をしているので相性も良い。
結晶とアモルファスの割合はポリエチレンの作り方によって異なる。では、アモルファス100%のポリエチレンにすればワックスをよく吸収する良い滑走面になると思われるが、結晶部分の少ない滑走面は強度が低下し、表面も軟らかく磨耗しやすい滑走面になってしまう。だから体積の割合で30~70%のものが用いられているのだ。
Ⅱ.分子量
分子量とは分子の重さのことで、分子を6.022×1023個集めて測った重さをグラムで表す。この数字が大きいほどポリエチレンの場合は1本1本の分子が長い、つまり重いということを示すのである。ちなみに6.022×1023という数字は炭素原子をこれだけ集めると12グラムにねるということからきている。
この12グラムというのは、炭素原子は原子核が重さの同じ6個の陽子と6個の中性子からできていて、質量と呼ばれる陽子と中性子の合計数(合わせて12個)とグラム数が一致するように設定しているからだ。原子核の回りを回っている電子は非常に軽いので無視でき、こうすると、物質の分子量と構成原子の質量数から、原子がいくつつながって分子を構成しているかが解るのである。
分子量は大きいほど強度が上がり、同じ強度でベースを作るのであれば、分子量が大きいほどアモルファスの割合を増やしワックスの吸収を良くすることが可能である。アモルファスの割合は処理の仕方で変えることはできるが、強度、耐磨耗性とのバランスをとって作られているのだ。
Ⅲ.エクストルードとシンタード
主な滑走面素材であるポリエチレンを成形する方法として二種類ある。
・エクストルード
粒や粉状のポリエチレンを溶かしてスクリューの回るパイプに通し、細長いノズルから外に押し出し、冷やし、板状に成形する方法。一般的な方法。
・シンタード
粉の状態の原料を型に詰めて圧力と熱をかけ、固め、円筒状になったものをトイレットペーパーをほぐすように剥いで板状にしていく。この方法は、分子量の大きさが大きいときにエクストルードの方法を用いると、粘りが強すぎて流れ出ないためである。
滑走面用のポリエチレンは結晶分の多い重いものに属し、高い密度のポリエチレンという意味でHDPE(High Density PE)と呼ばれる。この定義は結晶分の比重が1.000に対し、アモルファス部分の比重が0.941以上のもののことだ(JIS規格)。また低密度のものもあり、LDPE(Low Density PE)と呼ばれ、カメラのフィルムケースを例にすると、柔らかいふたの部分がLDPEで、硬いケースの部分がHDPEでその違いがわかるだろう。
滑走面のポリエチレンはこれらのものと比較すると、分子量は格段に多く特殊な素材だ。そこで1.500.000以上のものは超高分子量ポリエチレン、つまりUHMW-PE(Ultra High Molecular Weight PE)と略され、HDPEの仲間である。これはアモルファスが多いため比重は軽めだ。
良い板ほど高密度PEを用いるわけだが、なぜアモルファスの少ない高密度PEを用いるのか、なぜ難しい処理のシンタードをするのか、という疑問が浮上してくる。たしかにLDPEはアモルファスが多くワックスの吸収力も良いが、強度が小さく磨耗しやすい。また温度に対しても強度は小さく、約110℃で溶けてしまうのでホットワクシングをすることもできないのだ。このような理由で、滑走面としての実用性があるのはHDPEで、なおかつアモルファスの割合を多くするためには分子量の大きいものが必要となるわけだ。
Ⅳ.ワックスを染み込ませる原理
滑走面にワックスを乗せアイロンで暖めると滑走面は熱膨張を起こす。このとき分子の数は変わらないので、分子間に隙間ができる。そして、結晶部分は隙間が狭いのでアモルファス部分の隙間に小さなワックス分子が入り込むのである。これがワックスを染み込ませる原理だ。しかし、ポリエチレンに小さな穴が開きそこにワックスが入るのではない。
時間が経つほど染み込む量は多くなるが、ある程度時間が経つと染み込むワックス量は一定になる。熱膨張の程度、つまり分子間の隙間が開く量が決まっているのだ。また、温度が高いほどその量は多くなるが、温度を上げすぎると滑走面が溶けたり、変質してしまう。つまり、ワックスが染み込みにくくなってしまうのだ。
Ⅴ.クリープ現象
ポリエチレンを含むプラスティックにはクリープ現象というものがある。これは、引っ張る方向に力をかけていると、たとえ限度内であっても時間とともに少しずつ伸びていくという性質である。このことをワクシングに応用すると、熱で広がった滑走面分子は、冷えて元に戻ろうとするときワックス分子が入っているため元に戻れず、時間が経つにつれ元に戻ろうとする力がなくなっていく、つまり、よりよくワックスを染み込ませることが可能なのである。
Ⅵ.ワックスを染み込ませる意味
ワックスは滑走すると、表面のワックスは削りとられ、染み込んだワックスが徐々に表面へと出てくるのだ。そしてそのまま滑走すると板に染み込んだはずのワックスもなくなってしまうのである。だから、ワックスを板に染み込ませず表面だけにワックスを塗るのでは、ワックスを塗らないことと同じ意味、つまりワクシングが無意味になってしまうのだ。
Ⅶ.酸化
滑走面の酸化とは炭素と水素からできているポリエチレン分子に酸素がくっついてしまうことだ。酸化を起こすと水や汚れが滑走面につきやすくなり、そこから新たな抵抗が生まれてしまうのだ。
実はポリエチレンという素材は酸素などを通す性質があり、アモルファス部分の分子間の隙間を小さな酸素分子が通れてしまうのだ。また、このとき滑走面内部にも酸化が及んでいることが考えられ、表面を削っても元のようには戻らない。
酸化は、高温になればなるほど急激に進み、50度では空気中の酸素でポリエチレンは酸化されていくのだ。
これを防ぐには常にワックスで滑走面に皮膜を作り、酸素と滑走面が直接触れないようにする必要がある。また、紫外線も滑走面を劣化させてしまう。紫外線は酸素と違ってワックスを透過してしまうので太陽に当たらないようにすべきだ。劣化してしまった滑走面は分子が切れたり、強度が低下しヒビが生じてしまい、そこからコア材の腐敗につながってしまうのだ。
板本来の機能性を保つ方法はしっかりとしたメンテナンス知識とそれを実行する能力の他に何も無いのだ。
参考資料 『実用 スノーボードの科学Ⅱ 用具&ワクシング編』 藤井徳明 著
http://www1.tcue.ac.jp/home1/takamatsu/102503/final.htm
なるほどね。
チューン屋の言ってることがデタラメであることが博識者の見解でよくわかる。
ソールは酸化するし、ワックスの入り込む穴はワックスが入ると閉じない。
やっぱり物事の本質を理解するには根底である科学的知見が必須だわな。
教養は大事。
ってなわけでハードに使った俺の板はもうワックス抜けてるだろうからワキシングすることにした。
ワキシングで大事なのは上記の方の卒業論文より、ソールを温めアモルファスの隙間を開かせてワックスを入れる。
そしてケバ取りも大事な要素。
ケバがあるとケバが邪魔してワックスが入らない、要は蓋をしている状態。
ワキシングは本当はケバを取るのが重要と言われている位ケバは邪魔。
これらをよーく理解して作業に取り掛かる。
①ソールのクリーニング
なんでもそうだけど、道具のメンテナンスはまず綺麗にするところから始まる。
オリンピックや大会上位入賞を目指す人以外の俺らみたいな一般庶民はガリウムが解説してるような超絶めんどくさいクリーニングはする必要ない。
まず、花粉の多い時期や油の多い時期はクリーナーを使って汚れを取る。
今どきのクリーナーはソールを溶かさない。
実際、チューニングショップもバンバンクリーナーを使っている。
ハイシーズンなら板は汚れにくいのでこの工程は飛ばす。
②ケバ取り
ブラシを使ってケバを取る&起こす。
ブロンズブラシやらナイロンブラシやらボアブラシを使う。
ノーズからテール方向に・・・とかどうでもよくてとにかくゴシゴシ。
順番はブロンズ、ナイロン、ボアの順番。
なぜかって?
研磨する時って荒いものから使って細かいものにするよね。
それと同じ。
順番関係ないとか言ってる人いるけど、やっぱそういう人って本質が分かってないんだと思う。
ブロンズはカタいから力ずくでやるとソールが傷つきそうだからMAXパワーには気を付けてね。
イメージとしてはブロンズブラシでデカいケバを刈り取る。
ナイロンで細かいケバを刈り取る
ボアでケバを起こす。
これを何回か繰り返す。
ブラッシングは大事 |
③スクレービング
え、ここでスクレービングだって!?と思うでしょう。
ブラシを見て分かる通り、あんなんでケバなんか取り切れるわけがない。
なのでブラッシングして起きているケバをスクレービングで一気に刈り取っちゃうって訳よ。
なら最初からスクレービングでよくない!?って思うじゃん?
ブラッシングしてスクレービングするとケバの取れ方が違うんですよ。
ハイシーズンで毎回滑り終わったらここまですればOK
さらにワックスを入れるならワキシングへ。
見えないケバがめっちゃ取れるよ |
④ワキシング前半
ソールに蓋をしているケバを取り終えたらワキシングをするんだけど、部屋が汚れるのが嫌だからって外でワキシングするのはダメ。
上記の論文の通り、ソールが温まらないとアモルファスが開かないので意味が無い。
だからワキシングは暖房の効いた部屋でしよう。
ワキシングする前に暖房の前とかコタツの中に板を入れてソールを温めるのは効果絶大。
さて、まずはワックスをソールに擦りつけよう。
消しゴムで消すようなイメージでゴシゴシすると板にワックスが付いていく。
これを各温度帯のワックスで塗っていく。
俺は紫と青と緑のガリウムワックスを使っているのでその順番に擦り付け。
汎用性の高い紫 |
ハイシーズンは青がいいね |
緑は全然擦っても付かない |
そしたら次は熱したアイロンにワックスを付けてちょっと溶かしたら板に擦って塗りこんでいく。
紫をベースにエッジ際は青と緑を塗りこんでいく。
アイロンでちょっと溶かしたワックスを擦りつけて塗りこむ |
⑤ワキシング後半
アイロンの温度はMAXにする。
ワックスを塗り込んだソールにアイロンを当てて動かしながらワックスを溶かしつつソールも温める。
同じ場所に1秒以上当て続けるのはソールが焼けるから危険。
ほんとスーーーっとアイロンを当てていく。
一回じゃ全然溶けないから何回も何回も当て流していく。
そうするとだんだん熱を持ってきてワックスが解け始め、そこから何回もやってると徐々にソールも温まってくる。
俺はこれを5分くらいやる。
ワキシングペーパーはお好きにどうぞ。
使っても使わなくてもヘタしたら板は焼ける。
使えば汚れも取れるし手元にあるなら使おう。
もちろんなくてもOK。
外国人なんかペーパー使わないしね。
ペーパーを使えばスクレービングで取れきれてない汚れを取れる |
⑥クールダウン
気が済むまでワキシングを行ったら室温まで冷ます。
そしてソールをじっくり見てほしい。
気泡やらクレーターみたいなのが出てきてるはず。
これはワックスが入り込んでいる証拠である。
詳しくは後述の考察でまとめる。
最後に②~③をしてワックスを取り除いたらワキシングは終了。
アモルファスに浸透した空気が押し出されてワックスが入った証拠 |
俺的ワキシング考察
上記の論文やそれを参考に上記のワキシングをした。
俺的考察は以下の通り。
まず、アモルファスのモデル図はこれである。
TOKOのカタログより |
このアリの巣のようなのがアモルファスらしい。
どんな条件で行ったワキシングかは不明なのでもしかしたらもっとワックスが染み込むのかもしれない。
で、この染み込んだワックスが表面の方からどんどん染み出ていくからワックスが抜けるわけね。
空っぽのアモルファスには空気が入り込む。
これを見ればブラッシングがどういう効果を出しているか理解できる。
さらに、SWIXの研究発表によると、ワックス吸収量はソール温度100℃で3分で飽和する事が示唆されている。
なので1回のワキシングを永遠とやっていても意味が無い。
100℃に達すると3分で飽和するからだ。
だが、上記の論文の通り、ポリエチレンにはクリープ現象が起こるのでクールダウンした後に再度アイロンをかける事で吸収量を上げることが出来る。
なので⑤~⑥を数回繰り返す事がめっちゃ有効的でワックスの使用量も少なくて済む。
さて、これらを踏まえると、なぜワックスをかけた後に気泡が見られるか分かる。
気泡が出てきてそれが割れたのがクレーターになるわけだが、これはアモルファスに入り込んでいた空気がワックスが入り込むことによって押し出されて気泡になっているのであろう。
つまりきちんとワックスが浸透している証拠なのである。
ちなみにシンタードとエクストルーデット(エクストルード)ではどれくらい吸収量に差がでるのか分かり易い表を見つけた。
分子量 | 耐磨耗性 mm3 | ワックス吸収 mg/cm2 | 密度 g/cm2 | 製造方法 | |
P-TEX N-100 | 20万 | 130 | 1 | 0.955 | 押出し成形 |
P-TEX Dura | 30万 | 80 | 1 | 0.960 | 押出し成形 |
P-TEX 1000 | 50万 | 70 | 2 | 0.952 | 押出し成形 |
P-TEX 2000 | 350万 | 20 | 6 | 0.937 | シンタード |
P-TEX 2000エレクトラ | 350万 | 30 | 5 | 0.990 | シンタード |
P-TEX 4000 | 800万 | 15 | 20 | 0.928 | シンタード |
P-TEX 6000 | 600万 | 17 | 12 | 0.932 | シンタード |
エクストルードは全然吸収しないし、シンタードでも全然吸収しないソールがあるのが分かる。
そしてこれを見れば品番が必ずしも分子量を示していないことも見て取れる。
本質を理解してソールメンテナンスしようぜ!!